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榮太樓總本鋪は文政元年(1818)、江戸は日本橋で創業し、以来190年余にわたり菓子を商っております。
その一菓子屋が、明治の初めに茶道宗遍流時習軒を継ぐことになりました。初代が、長女が師事していた時習軒の7世家元が明治維新で大名などの有力なパトロンを失い、困窮しているのを知り、生活費を贈ったところ、意味なく受け取れないとして道具や伝書などを譲るとともに、後を託すと申し出られたのです。これ以降、時習軒は榮太樓總本鋪の当主が家元を務めることとなり、現在は私が11世家元を継承しています。
榮太樓ミニギャラリーは、日本橋本店内に置いたショーケース一つだけのささやかなギャラリーです。15年ほど前に店を改装した際に、当家に伝わる茶道具や書画、美術工芸品などを公開し、お客様に楽しんでいただこうと設けたもので、毎月、私はこの空間で何を表現しようかと頭をひねっています。四季折々の風情はもちろん、敬老の日、オリンピックといった時事をテーマにすることもあります。
茶の湯とは趣味の習い事ではなく、「道」であり、茶席という日本の文化が凝縮する空間で、もてなしの心や美しいしぐさ、人としての器量などを研鑽するところだと考えています。ただ、それは堅苦しいものではなく、下品に陥らない気楽さが大事です。
日本橋にいらしたら、ぜひ足をお運びください。茶の湯の世界が創り出す小宇宙を楽しみながら、一服していただけたら幸いです。
細田 安兵衛(榮太樓總本鋪相談役)

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