
旧「あじわい」サイトから、選りすぐりの記事をまとめてお読みいただけます。
「あじわい」トップに戻る

「小豆」と聞くと、小さな赤い豆を思い浮かべる。小豆色という言葉もあるように、小豆は赤い豆の代表格である。しかし、日本各地の在来種や中国の遺伝資源を調べると、黄白色、黒紫色、灰緑色、赤白のぶちなど、実に多様な色をした小豆が見つかる。少しクリーム色がかった白小豆は、高級な白餡の原料としても使われている。
古来、中国や朝鮮半島では、小豆の赤い色には呪術的な力があると信じられてきた。赤は太陽の色、火の色を意味することから、人々の生命力を鼓舞し、悪霊を退治すると考えられたのだ。祝いの席に赤色の小豆が使われるのは、これに由来する。
中国東北部では、小豆粥が冬の朝食に欠かせない食事となっている。小豆の身体を温める力が、厳寒の冬を乗り切るために必要とされているのである。この風習は日本にも伝えられ、宮中での儀礼や民間の年中行事に取り入れられて、小正月にあたる1月15日には小豆粥を食べる行事が各地で行われている。
小豆の色について、もう少し詳細に見てみると、小豆の品種によって種皮の色が異なり、栽培された年次や産地によっても違いのあることがわかる。これには、小豆の花が咲いてから、子実が成熟するまでの期間(登熟期間)の気象条件が関係している。この間の気温が低い年や、涼しい地域で栽培されたものは、明るい色調となる。 小豆は1カ月以上にわたり、次から次へと花を咲かせるため、開花した時期によっても種皮色が異なる。開花時期が遅いほど、明るく黄色味が強い色調となり、このような小豆は色浅粒と呼ばれることもある。
北海道では家全体を暖房で暖めるため、こたつを使う家庭は少ない。凍える外とは別世界の暖かい家の中で、冷たい氷菓が食べられている。お正月、お雑煮の後は粒餡をたっぷりのせた氷小豆で幸せな気分を味わいたい。

illustration by 小幡彩貴
|