「晴々」笑顔の参詣土産 No.207

ぴーなっつ最中

「晴々」笑顔の参詣土産

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 正月三が日だけで三百万人もの初詣客が訪れる成田山新勝寺。「成田のお不動さん」と親しまれている古刹の表参道に、なごみの米屋がある。
 120年余の歴史を紡ぐ菓子店の看板商品は、初代が新勝寺の精進料理に想を得たという「栗羊羹」。どこを切っても栗がごろごろ。観光地土産の筆頭格の名品だ。
 さらに、もう一つ、大人気の名物菓子がある。千葉特産の落花生の形をした最中種に、ピーナッツの甘煮を煉り込んだ風味豊かな餡を詰めた、その名も「ぴーなっつ最中」。
 味も独創的なら、姿形もユニーク。加えて、箱のデザインの斬新なことといったらない。地中で実をつける落花生の姿が鮮やかな赤白の線だけで表されていて、箱全体も落花生。これが、平成10年(1998)の発売当初からのデザインだと聞いて、その古びない美しさに驚かされる。
 誰をも笑顔にするお土産を手に、参詣の帰り道は晴々楽しい。

なごみの米屋

住所 千葉県成田市上町500
https://www.nagomi-yoneya.co.jp

「ありがとう」を贈る No.202

感謝の喜もち

「ありがとう」を贈る

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 赤坂青野といえば、小風呂敷包みにしたきな粉餅の元祖「赤坂もち」が有名だが、いま、もう一つの餅菓子が評判になっている。
 その名も「感謝の喜もち」。餡にも求肥餅にも黒砂糖をたっぷり使い、仕上げに和三盆糖をふわりとまぶした一口サイズの大福餅だ。そして、思わず笑ってしまうのは、それが賞状筒に入っていること。
 筒の中には「感謝状」も同封されている。通常の文章は菓子の栞だが、文字なしの感謝状も用意されているので、ここは自筆で「ひとこと」書きたいところ。普段なら照れてしまうような言葉も、菓子にユーモアがあふれているから思いきって書けそうだ。冠婚葬祭や同窓会などで数がまとまれば印刷のサービスもある。

赤坂青野

東京都港区赤坂7‐11‐9
TEL 03(3585)0002

「甘」色の宝石 ぬれ甘なつと No.197

ぬれ甘なつと

「甘」色の宝石

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 関西出張に持っていくと、口の肥えた女子社員が満面の笑顔で迎えてくれると噂に聞いた。その東京土産こそが花園万頭の「ぬれ甘なつと」。一般的な甘納豆と違い、小豆が煮崩れておらず芯まで柔らかで、表面はみずみずしい艶を帯びている。
 ぬれ甘なつとが生まれたのは、戦後の食糧難が続いていた昭和24年。砂糖についていえば、家庭向けにやっと配給が始まり、業務用も少量の割当が開始された頃のこと。戦争で店も工場も失った花園万頭の3代目が、ようやく手に入れた小豆と砂糖を惜し気もなく使い、試作を繰り返しながら創り上げたのが、この露に濡れた宝石のような菓子だった。
 歴史を知れば、味わいはさらに増す。小豆のおいしさが口の中で広がる幸福感に、ひととき日常が遠のく。

花園万頭

東京都新宿区新宿5-16-15
TEL 03(3352)4651 http://www.tokyo-hanaman.co.jp/

天保5年(1834)、金沢に創業。東京に出た3代目が昭和初期に「花園万頭」を売り出して人気となり、今日の礎を築いた。安心・安全をベースに、ほっとする手造りの味を守り続けている。

「きらめく」果実みすゞ飴 No.193

「きらめく」果実

「きらめく」果実

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 国産果実と寒天とグラニュー糖と水飴だけで作るゼリー菓子である。もちろん、無着色、無香料。使う果実は、あんず、もも、りんご、ぶどう、三宝柑、梅の6種類。
いずれも木に成っている状態で完熟させ、一番おいしく香り高くなったものを収穫したものだ。
そして、果汁を絞り、天然の色と香りを壊さないように煮詰め、流し折に入れて固め、切り分けて、一つ一つに薄いオブラートを巻き付けて乾燥させるまでの工程が、ほぼ手作業で行われている。
 明治末期に「みすゞ飴」が生まれて百年余。菓子作りは、いまや希少種となった果実本来の味を留めた古い品種を守ることにもつながっているという。
 みすゞ飴の味わいは、果実の色、香りそのもの。信州の誇りをかけた、ぶれない颯爽とした菓子作りの姿勢から、きらめく菓子が生まれている。

和菓子は日本の心と文化を伝えるものとして、掛け紙や包装紙にも気を配っている。掛け紙は季節により、桜、アジサイ、朝顔、萩、紅葉、椿と変わる。 おとし文(右)と、おとし文「壹」(左)。味の要の黄身餡は、岩手の契約農場から届けられる新鮮な卵に、徳島産の和三盆を加えて作られる。

飯島商店

長野県上田市中央1-1-21
TEL 0120(511)346

上田駅前にある本店の建物は、国の登録有形文化財に指定されている。
シャンデリアが灯り、アンティーク家具が置かれた格調高い店内の居心地の良さ、接客のすばらしさも評判。

「老い」も「若き」も老伴 No.192

「老い」も「若き」も老伴

「老い」も「若き」も

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 他に類を見ない菓子である。片面は最中、ところが反対側は羊羹。江戸時代から伊勢詣の人々で賑わい繁栄してきた松阪の名物菓子、「老伴」だ。
 最中の側に描かれた不思議な模様は中国の古瓦の写しで、中央は幸せを呼ぶコウノトリ、両翼の上には「延年」という文字が描かれているのだそうだ。太陽を表しているという、すりガラスのような光沢を持つ赤い羊羹とも相まって、めでたさが匂い立つ。
 しかし、古来、めでたい菓子ほど甘いのが決まり。おまけに、大きい。覚悟を決めて口にする。と、あっさりとした甘さの羊羹と香ばしい最中の相性の良さに驚かされる。さらに、この菓子が430年も前から作られていると聞けば、誰もが目を丸くするはずだ。
 驚きは、幸せの種。老いも若きも思いきり驚いて笑顔になりたい。

和菓子は日本の心と文化を伝えるものとして、掛け紙や包装紙にも気を配っている。掛け紙は季節により、桜、アジサイ、朝顔、萩、紅葉、椿と変わる。 おとし文(右)と、おとし文「壹」(左)。味の要の黄身餡は、岩手の契約農場から届けられる新鮮な卵に、徳島産の和三盆を加えて作られる。

柳屋奉善

三重県松阪市中町1877
TEL 0120(51)0138

天正3年(1575)、近江の国で創業。蒲生氏の御用菓子司だったが、蒲生氏郷の国替えに伴って伊勢・松阪に移った。 「老伴」は創業時から作り続けている銘菓。

銘菓の装い No.125 十勝日誌

十勝日誌

お菓子の玉手箱

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 「十勝日誌」というぶ厚い本を目の前にどんと置かれて、まさかその中に十数種類ものお菓子がぎっしり詰まっているとは、誰も思わない。表紙をめくり、第1ページ目を開いて、アッと驚く。
中に詰まっているのはお菓子だが、北海道の歴史であり、物語でもある。たとえば、鍋の形を模した最中「ひとつ鍋」は、帯広開拓の恩人依田勉三翁の句「開墾のはじめは豚とひとつ鍋」にちなむ菓子。石川啄木の「しらしらと氷かがやき千鳥なく釧路の海の冬の月かな」から名づけた「冬の月」しかり。
包装で目をひくのは、かますに入れてぐっと縄をかけた甘納豆「らんらん納豆」、開拓時代から製造されたバター「マルセイバタ」のラベルを模したレトロ調の「マルセイバターサンド」。ふきのとうの絵のホワイトチョコレートも、もちろん入っている。
「十勝日誌」は、お菓子を詰め合わせて、六花亭の商品の実物カタログにもなっている。 空き箱が捨てがたく、文庫に使っているという話も聞いた。
ところで、「十勝日誌」とは何かといえば、松浦武四郎の著作名の一つである。松浦は江戸末期から明治にかけて北海道をくまなく探検調査。「北海道」をはじめ、「十勝」「石狩」など、北海道の地名のほとんどを名づけた人で、彼抜きで北海道の夜明けは語れない。
では、社名「六花亭」の由来は何かというと、雪の結晶を表す異称「六花」からとり、奈良東大寺の元管長・故清水公照師が名づけたという。
六花亭が建設した中札内美術村は、お菓子屋さんの夢が生んだ特異な北海道文化。柏林の中に、相原求一朗美術館、六花亭の包装紙にもなっている山野の草花を描いた画家、坂本直行記念館、レストランなどが点在し、美にふれるひとときへと人をいざなう。

 文/大森 周
写真/高木隆成

北海道 六花亭

北九州市小倉北区赤坂海岸3―2
お客様相談室 0120 ( 012 ) 666

創業の「心」をつないで No.206

創菓 嘉永餅

創業の「心」をつないで

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2014年の初夏、東北を代表する名菓、薄皮饅頭で知られる柏屋に新たな菓子が誕生した。その3年前に起きた東日本大震災の影響で休店していた本店の再開を記念して発売された「創菓 嘉永餅」だ。
 包装をほどくと、ふわりとバターの香り。一口食べれば、もっちりと弾力のある生地にも驚かされる。そして、ほどよい甘さの餡に混ぜ込まれた松の実が舌の上で踊る。
 五感を楽しませてくれる味わいは、160余年の歴史が磨いた職人技によるもの。街道の茶店時代の風情を写したような素朴な姿形もよい。
 菓銘の「創菓」の二文字は、菓子で人々の心をなごませ、滋養を満たしたいと嘉永5年(1852)に菓子作りを始めた初代の心を受け継ぐという清々しい覚悟の言葉。
 「この街に柏屋があってよかったと言ってもらえるような菓子屋になりたい」と、5代目当主。
 こんな菓子屋がある街は、幸せだ。

柏屋

住所 福島県郡山市富久山町久保田字宮田127-5
TEL 024(956)5511
https://www.usukawa.co.jp/

新しい時代の「願い事」は? No.205

しろくまバターせんべい

新しい時代の「願い事」は?

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 銘菓「若草」をはじめ、松江の風土に根ざした菓子作りを続ける彩雲堂が、和菓子に関心の薄い若い世代にも手にとってもらえるようにと創作した菓子が静かなヒットを続けている。
 勾玉の形をした一口サイズの干菓子で、その名も「願ひ菓子」という。
 勾玉は、先史・古代日本における装身具で、歴代の天皇が伝えてきた三種の神器の一つにも八坂瓊曲玉が含まれるように、不思議な力を秘めているといわれる。多くはヒスイやメノウ、水晶などで作られ、日本各地で出土しているが、出雲で作られた勾玉は、ふっくらとした丸い尾を特長としているそうだ。
 「願ひ菓子」は、その美しい形を映し、いちご、柚子、ココア、和三盆、抹茶の5つの素材の味わいを閉じ込めた菓子。口に含むと和三盆のまろやかな甘みが溶けて、心まで満ちる。
 7月7日は七夕。皆さんの願い事は何ですか? できることなら、世界中の人々の願いが叶いますように。

彩雲堂

住所 島根県松江市天神町124
TEL 0852(21)2727

北海道の「カワイイ」 No.204

しろくまバターせんべい

北海道の「カワイイ」

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「カワイイ!」北海道旅行の土産で、歓声あがること間違いなしのお菓子が「しろくまバターせんべい」だ。
愛らしい顔と足跡の焼印は、札幌市円山動物園で生まれたホッキョクグマの赤ちゃんをモデルにしたものだとか。んー、ほんとにカワイイ!
 菓子は三八菓舗の初代が大正8年に創案した「バターせんべい」をアレンジしたもので、作り方も当時とほとんど変わっていないそうだ。
 小さく切った生地を1枚ずつ熱い鉄板ではさんで焼き上げ、熱い間に焼印をジュッと押す。だから、煎餅の形も子ぐまの表情も1つ1つ違う。違うから楽しい。違うからカワイイ。「カワイイ!」は手仕事から生まれているのだ。
 パリッと噛めば、軽い歯ごたえとバターの香り。おいしい土産は、旅の報告にもなれば旅の誘惑にもなる。
 円山動物園では昨春、ホッキョクグマ館がリニューアルオープンしたところ。また北海道、行こうか!

三八菓舗「菓か舎」

住所 北海道札幌市中央区
南1条西12丁目322
TEL 011(271)1138

でっかい「福」を引き寄せる No.203

福引せんべい

でっかい「福」を引き寄せる

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 2月3日は節分。全国各地で節分行事が行われるが、江戸時代に日本一の奇祭と呼ばれていたのが津市の古刹、津観音寺の鬼押え節分会だったという。神刀で鬼を切りつけて厄払いをするのだが、本物の日本刀を使うので毎年、死傷者が続出。さすがに問題となり、現在は走り回る鬼役を武士に扮した人々や芸妓・舞妓がにぎやかに追い払う行事となっている。
 ところで、この節分会に欠かせない菓子が、寺の門前に暖簾を掲げる平治煎餅本店が作る「福引せんべい」だ。大中小と3つの大きさがあるが、ここに掲載したのが小!
大ともなると、煎餅の長径が50センチほどにもなる。
 その大らかな形にまず頬がゆるみ、バリンと割って食べれば思いがけなくやさしい甘みと口どけ。そして、煎餅の中からは、おまけの縁起物が出てくる。
 福よ来い。でっかい煎餅に、人々の願いが託される。

平治煎餅本店

三重県津市大門20‐15
TEL 059(225)3212