菓子屋のAnother Work(16) No.202

お菓子の香梅のAnother Work

「西川屋おりじん」は、私ども西川屋老舗の赤岡本店を改築した際に発見された古文書や菓子道具を公開している資料館です。
 赤岡は、大盃で豪快に酒を飲み干す「どろめ祭り」や、幕末の絵師・絵金が描いた屏風絵を所蔵する家々が軒先に展示する「絵金祭り」などで知られていますが、古くから市がたち、参勤交代の折には藩主がご宿泊された町でした。代々、素麺や麩、菓子を作り、慶長6年(1601)の山内一豊侯の入国以降は土佐藩山内家の御用を勤めていた当家が、初めての店を赤岡の地に構えたのも、町の豊かさが背景にあってのことでした。
 この資料館の展示も、山内家御用関係の古文書が中心となっています。なかでもご覧いただきたいのが、屏風に25枚の古文書を貼り付け仕立てた「御用状 貼り交ぜ屏風」です。文書の内容は、梅干入りの干菓子についての記述や、隠居された藩主の古希を祝う菓子の注文など様々で、どなたでも読んでいただけるよう全文を翻刻したパンフレットもご用意しております。なお、文書の紙の色が違うのは、正式な文書の紙を時期により変えていた藩の政策によるものです。
 1階には、包装用に使っていた江戸期から昭和初期にかけての木版印や、絵金が描いた幟などを展示しております。また、赤岡本店限定の菓子などを楽しんでいただけるお席もございます。  古き佳き町にある土佐の和菓子文化の伝承と発信の拠点に、ぜひ一度お越しください。

(池田聰博 西川屋老舗社長)

西川屋おりじん

住所:高知県香南市赤岡町470
電話:0887(54)3066
営業時間:土・日曜の10時〜17時30分
ホームページ
http://www.nishigawaya.co.jp/akaoka-honten.htm

菓子屋のAnother Work(15) No.201

お菓子の香梅のAnother Work

 みすゞ飴でご愛顧をいただいております飯島商店は、江戸時代に穀物商として始まりました。明治中期に、上田の鉄道開通を機に駅前に移転。大正13年(1924)に建て替えた建物を現在も本店として利用しておりますが、この店舗棟が、隣接する事務棟、作業棟とともに平成19年(2007)に登録有形文化財に登録されました。  本店の建物は石造りに見えますが、実は木造の3階建てです。外壁に石目地と呼ぶ表面をざらざらに仕上げる壁塗りを施したもので、木造建築の技術を駆使して洋風建築を実現しようとした大正時代の空気をよく表しています。

 建造当時、養蚕・蚕種の一大拠点だった上田は、製糸業を中核とした国の殖産興業政策により空前の活況を呈していました。好景気に乗じて数多くの洋風木造建築が駅前に軒を連ねる中、このハイカラな建物はひときわ人々の目を引いたようです。

 しかし、生糸関連産業の衰退と昭和中期に進められた商店街の近代化事業により、美しい建物は次々に取り壊されていきました。本店に隣接する倉庫業者の繭蔵もその運命にありましたが、昭和45年(1970)に当社が購入し、事務所、作業所として今も大切に使っています。
 ここにご紹介した3棟は、上田の駅前に唯一残った大正モダニズムを今に伝える貴重な建築遺産・産業遺産です。ぜひ優雅で壮麗な風情の店舗や養蚕で隆盛を極めた時代を象徴する繭蔵をご覧になりに上田にお越しください。

(飯島浩一 飯島商店社長)

みすゞ飴本舗 飯島商店上田本店

住所:長野県上田市中央1-1-21
電話:0268(75)7620
営業時間:10時〜18時
ホームページ
http://misuzuame.com/html/bunkazai.htm

菓子屋のAnother Work(1) No.182

柏屋のAnother Work

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夏扇(なつおうぎ)  私ども柏屋の本店、支店には、ちょっと変わったショーウインドーがあります。毎月1篇、子どもの詩が飾られるのです。そして、そのウインドーを『青い窓』と呼び、同名の小冊子を月刊(震災後は隔月)で発行してきました。
 その活動が、本年2013年5月で55周年を迎えました。『青い窓』は545号を数え、これまでに投稿された詩は約30万篇、掲載された詩は1万篇以上にのぼります。
 『青い窓』は昭和33年5月に郡山で誕生しました。盲目の詩人のひろしちゃんこと佐藤浩を中心に、看板屋のけんちゃんこと篠崎賢一、画学生のみっちゃんこと橋本貢、饅頭屋のようちゃんこと四代目本名善兵衛(幼名洋一)という幼なじみの仲間4人が、子どもの夢を育む場を作ろうと、詩を募集し、展示、出版する活動を始めたのです。

夏扇(なつおうぎ) その後『青い窓』からは何冊もの単行本が生まれ、国内外に12もの姉妹紙が誕生しました。また、詩に感動した作曲家の皆様からのお申し出により50を超える詩にメロディがつけられ歌となりました。さらに『青い窓』の詩を世界に紹介する「スカイライトプロジェクト」も昨年から始まっています。
 地道に、しかし着実に『青い窓』は進化しています。ぜひ、ホームページをご覧ください。また、ぜひ一度、開成柏屋内「青い窓ポケットガーデン」に遊びにお越しください。

本名善兵衛(柏屋 五代目当主)

■ 青い窓事務局・青い窓「ポケットガーデン」

(開成柏屋内)/福島県郡山市朝日1-13-5 TEL:024-925-6451

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■ 『青い窓』ホームページ

http://www.aoimado.jp/

■ 電子書籍アプリ『ぼくらのことのは』

女子アナウンサーさん達がボランティアで青い窓の詩を朗読するアプリ。震災をきっかけに創刊。無料。

●iPhone/iPad版 ●Android版
いずれも「ぼくらの ことのは」で検索してみてください。

菓子屋のAnother Work(12) No.197

龜屋のAnother Work

 龜屋は天明3年の創業以来、235年にわたり川越で菓子業を営んで参りました。
 当地は川越藩の城下町として栄え、現在も江戸の町並みの面影を残すことから「小江戸」と呼び親しまれ、多くの観光客の方々で賑わっています。昨年には川越氷川祭(川越祭り)が「山・鉾・屋台行事」の一つとしてユネスコの無形文化遺産に登録され、2020年の東京オリンピックではゴルフ競技が開催されることも決まりました。

 さて、蔵造りの本店に併設された公益財団法人「山崎美術館」は、龜屋の4代目山崎豊が蒐集した橋本雅邦の作品を軸とした日本画のコレクションを公開するため昭和57年(1982)に設立されたものです。
 橋本雅邦は川越藩のお抱え絵師で、明治政府のお雇い外国人アーネスト・フェノロサの援助を受け、狩野芳崖とともに近代日本画を担った人物です。また、東京美術学校で下村観山、横山大観、菱田春草などの指導にあたったことでも知られています。この雅邦を、4代目は川越の有志を中心に「画宝会」を結成して作品を頒布し、援助しました。

 当館では雅邦の作品を軸に雛人形や五月人形、陶磁器、菓子の木型など、山崎家・龜屋に伝わる資料の展示を行っております。建物は龜屋の旧工場と蔵の一部を改築したもので、蔵造り建築の特徴や意匠を内から見ることができます。
 井戸端の休憩所ではお茶と菓子もお楽しみいただけます。川越散策の際には、ぜひお立ち寄りください。

かつて米屋が製造していた羊羹の包み紙。「空港羊羹」や「三越の羊羹」など珍しいものも。 戦前から戦後にかけて成田で製造販売されていた羊羹のパッケージ。成田が羊羹の町であることがよくわかる。

公益財団法人 山崎美術館

住所:埼玉県川越市仲町4−13
電話:049−224−7114
時間:9:30〜17:00(入館は16時30分まで)
木曜休館(祝祭日の場合は開館)
入館料:一般500円、高・大学生350円、
小中学生200円
ホームページ
http://www.koedo-kameya.com/original8.html
山崎美術館は、龜屋本店に併設されている
赤福

菓子屋のAnother Work(11) No.195

赤福のAnother Work 五十鈴蔵

 榮太樓總本鋪は文政元年(1818)、江戸は日本橋で創業し、以来190年余にわたり菓子を商っております。
 その一菓子屋が、明治の初めに茶道宗遍流時習軒を継ぐことになりました。初代が、長女が師事していた時習軒の7世家元が明治維新で大名などの有力なパトロンを失い、困窮しているのを知り、生活費を贈ったところ、意味なく受け取れないとして道具や伝書などを譲るとともに、後を託すと申し出られたのです。これ以降、時習軒は榮太樓總本鋪の当主が家元を務めることとなり、現在は私が11世家元を継承しています。
 榮太樓ミニギャラリーは、日本橋本店内に置いたショーケース一つだけのささやかなギャラリーです。15年ほど前に店を改装した際に、当家に伝わる茶道具や書画、美術工芸品などを公開し、お客様に楽しんでいただこうと設けたもので、毎月、私はこの空間で何を表現しようかと頭をひねっています。四季折々の風情はもちろん、敬老の日、オリンピックといった時事をテーマにすることもあります。
 茶の湯とは趣味の習い事ではなく、「道」であり、茶席という日本の文化が凝縮する空間で、もてなしの心や美しいしぐさ、人としての器量などを研鑽するところだと考えています。ただ、それは堅苦しいものではなく、下品に陥らない気楽さが大事です。
 日本橋にいらしたら、ぜひ足をお運びください。茶の湯の世界が創り出す小宇宙を楽しみながら、一服していただけたら幸いです。

細田 安兵衛(榮太樓總本鋪相談役)

かつて米屋が製造していた羊羹の包み紙。「空港羊羹」や「三越の羊羹」など珍しいものも。 戦前から戦後にかけて成田で製造販売されていた羊羹のパッケージ。成田が羊羹の町であることがよくわかる。

榮太樓ミニギャラリー

住所:東京都中央区日本橋1−2−5
(榮太樓總本鋪 日本橋本店内)
電話:03-3271-7785
時間:9:30〜18:00 日曜・祝日定休
ホームページ
http://www.eitaro.com/
ギャラリーは本店の入口を入ってすぐ右手。
赤福

菓子屋のAnother Work(10) No.194

赤福のAnother Work 五十鈴蔵

 赤福は宝永4年(1707)の創業。伊勢神宮の神域を流れる五十鈴川のほとりで、「赤福餅」一筋に、お伊勢参りの皆様をお迎えして参りました。
 本店の建物は明治初期のものですが、その隣に昭和62年に建てたのが「五十鈴蔵」。蔵造りではありますが、ご参拝の皆様に伊勢のことを少しでも知っていただくことで“荷物にならないお土産”になればとの願いを込めて創設したギャラリーです。
 開館当初は、木彫り人形を使って、「伊勢神宮のおまつり」と「式年遷宮のおまつり」をご紹介しておりました。その後、平成18年には当店の創業300年に合わせて「赤福の歴史展」を約1年開催。さらに平成21年から26年9月までは「日本人のこころ〜神宮の森〜」と題した写真展を開催してきました。
 そして、昨年12月から始まっているのが「餅街道ものがたり展」です。ピーク時には年間500万人ともいわれる人々がお伊勢参りをしていたという江戸時代、桑名から伊勢までの道には、旅人のお腹を満たし、疲れを癒す多くの餅屋が生まれ、参宮道は、別名「餅街道」と呼ばれたほどでした。
 本展では、当時のお伊勢参りの様子や、今も人々に親しまれている名物餅のご紹介を通して、お伊勢参りがはぐくんだ餅文化を広く紹介し、伊勢の心、そして美しい日本のおもてなしの心をお伝えしております。
 伊勢の地に生まれた、他に類をみない独特の文化をご覧いただけたら幸いです。

山口 陽子(赤福 広報)

かつて米屋が製造していた羊羹の包み紙。「空港羊羹」や「三越の羊羹」など珍しいものも。 戦前から戦後にかけて成田で製造販売されていた羊羹のパッケージ。成田が羊羹の町であることがよくわかる。

戦争中のパッケージ。 明治時代の米屋の羊羹のパッケージ。 かつて作られていた缶入りの羊羹。デザインやロゴの斬新さに驚かされる。

1階の企画展示室。写真は、昨年開催された第24回企画展「和菓子の掛け紙・包装紙展」。全国銘菓加盟店の協力を得て、すばらしい意匠の掛け紙や包装材が一堂に集まり、大きな反響を呼んだ。 2階の常設展示場。一角に初代・長蔵の部屋を再現したコーナーなども。

五十鈴蔵

住所:三重県伊勢市宇治中之切町26
開館:平成29年3月末頃まで(予定)
    午前9時〜午後5時(最終入場は午後4時30分)
    年中無休 入場無料
ホームページ
http://www.akafuku.co.jp/fun/mochikaido/
五十鈴蔵は、赤福本店・五十鈴茶屋本店横にある
赤福

菓子屋のAnother Work(9) No.193

とらやのAnother Work とらや 東京ミッドタウン店ギャラリー

 とらやは室町時代後期の京都で創業、5世紀にわたり、和菓子屋を営んでまいりました。現在、小倉羊羹『夜の梅』をはじめ、最中や四季折々の菓子を販売しております。
 六本木のランドマーク、東京ミッドタウン内に「とらや 東京ミッドタウン店」がオープンしたのは2007年のこと。和菓子にとどまらず、和の様々な魅力や価値も広くお伝えしたいという想いからギャラリーを併設し、さまざまな企画展を開催しております。想いを同じにする方とパートナーを組み、これまで、ふろしきやこけし、猫などをテーマに実施してまいりました。2014年からは、食まわりを中心に、日本に生まれ育まれた身近な道具を展示・販売する「とらや市」も開催。造形の美しさや力強さ、実用性を兼ね備えた伝統的な品を見つめなおし、現代の生活に用いていただきたいと、籠やざる、箸や匙などをご紹介しております。
 現在開催しているのは、雨をテーマにした企画展「雨を感じる」。日本は世界の国々の中でも降水量が多いと言われ、四季折々に雨の表情も変わります。雨にまつわる名前は400語以上にのぼると言われ、雨が古くから日本人にとって身近な存在だったことがうかがえます。
 本展では、「養花雨」「猫毛 雨」など、さまざまな雨の名前を中心に、雨を表現した文学や絵画、そして菓子をご紹介しております。
 先人たちの感性豊かな世界をぜひお楽しみください。

橋本 恒平(とらや 東京ミッドタウン店ギャラリー担当)

かつて米屋が製造していた羊羹の包み紙。「空港羊羹」や「三越の羊羹」など珍しいものも。 戦前から戦後にかけて成田で製造販売されていた羊羹のパッケージ。成田が羊羹の町であることがよくわかる。

戦争中のパッケージ。 明治時代の米屋の羊羹のパッケージ。 かつて作られていた缶入りの羊羹。デザインやロゴの斬新さに驚かされる。

1階の企画展示室。写真は、昨年開催された第24回企画展「和菓子の掛け紙・包装紙展」。全国銘菓加盟店の協力を得て、すばらしい意匠の掛け紙や包装材が一堂に集まり、大きな反響を呼んだ。 2階の常設展示場。一角に初代・長蔵の部屋を再現したコーナーなども。

とらや 東京ミッドタウン店ギャラリー

東京都港区赤坂9-7-4 D-B117 東京ミッドタウンガレリア地下1階
電話:03-5413-3541
開館時間:11:00〜21:00(店舗営業時間と同じ) 
料金:無料
ホームページ
https://www.toraya-group.co.jp/

第37回企画展「雨を感じる」は6月2日(木)〜10月3日(月)の開催

成田羊羹資料館

菓子屋のAnother Work(8) No.191

なごみの米屋のAnother Work「成田羊羹資料館」

 「なごみの米屋」は明治32年(1899)に初代・長蔵が地元産芝栗の甘煮を練りこんだ栗羊羹を成田山新勝寺の参道で製造販売したのが始まりです。大正の初年頃から、成田詣での土産は「米屋の栗やうかん」が定番になりました。30軒近い羊羹屋が軒をつらねていた時期もありました。成田が「羊羹の町」であることを、訪れるお客様にお伝えしたい…、そんな思いで成田山表参道・なごみの米屋總本店の裏手に『成田羊羹資料館』はお目見えしました。
 2階の常設展示場には、かつて参道で販売されていた10数店の60余点もの羊羹のパッケージ・コレクションがあります。多様な意匠に当時の賑わいが伝わってきます。当店が開発した密封銀紙流し込み羊羹や戦時中の巻き取り式缶詰羊羹、戦後の缶入り水ようかんなど時代の先駆け商品も紹介しています。慰問品の羊羹のおいしさを綴った戦地からのお便りの展示は、この町のもう一つの歴史を伝えています。
 1階には半年替わりの企画展示があります。「米屋百年の歩み」「羊羹の話」「お菓子の昭和史」「成田の風景 いま・むかし」「和菓子の掛紙・包装紙」などテーマは多彩です。現在開催中の「成田をめざす鉄道の歴史」展には、多くの鉄道ファンが訪れています。 羊羹資料館の近くには、室町時代の永禄の昔、ご本尊不動尊明王像を当家で仕守りしておりましたご縁の「お不動様旧跡庭園」があります。どうぞごゆっくり門前町成田の散策をお楽しみください。

諸岡 靖彦(なごみの米屋 店主)

かつて米屋が製造していた羊羹の包み紙。「空港羊羹」や「三越の羊羹」など珍しいものも。 戦前から戦後にかけて成田で製造販売されていた羊羹のパッケージ。成田が羊羹の町であることがよくわかる。

戦争中のパッケージ。 明治時代の米屋の羊羹のパッケージ。 かつて作られていた缶入りの羊羹。デザインやロゴの斬新さに驚かされる。

1階の企画展示室。写真は、昨年開催された第24回企画展「和菓子の掛け紙・包装紙展」。全国銘菓加盟店の協力を得て、すばらしい意匠の掛け紙や包装材が一堂に集まり、大きな反響を呼んだ。 2階の常設展示場。一角に初代・長蔵の部屋を再現したコーナーなども。

成田羊羹資料館

千葉県成田市上町500
電話:0476(22)2266
開館時間:10時〜16時
休館日:展示替え時は休館
料金:無料
ホームページ
http://www.nagomi-yoneya.co.jp/06_youkanshiryoukan/

「なごみの米屋」の總本店の裏手に建てられている成田羊羹資料館。玄関先にある赤い郵便ポストは今も現役。

成田羊羹資料館

菓子屋のAnother Work(14) No.199

お菓子の香梅のAnother Work

「お菓子の香梅」は、菓子作りを通して、時代を超えて受け継いでいくべき大切なものを世の中に伝えていくという創業者の精神を、「くつろぎのごちそう」という言葉に込め、企業理念としております。「古今伝授の間」に関わる事業も、そうした想いから生まれたものです。
 古今伝授の間は、熊本県を代表する名勝・史跡、水前寺成趣園の一角にあります。もともと京都御所内にあったこの書院造りの建物は、和歌の才に秀で、桂離宮を造ったことでも知られる後陽成天皇の弟君・八条宮智仁親王の学問所でした。
 ここで慶長5年(1600)に、後に肥後細川家の初代となる細川幽斎公から勅撰和歌集『古今和歌集』の奥儀が伝授されました。当時、古今和歌集は学問の最高峰であり、その奥義は、一人から一人への口伝により正統が保たれていたのです。
 時は移り、古今伝授の間は、明治時代に細川家に下賜され、大正元年(1912)この地に移築復元。平成10年(1998)からは当社が維持管理をお引き受けしてきました。近年、大幅な修復工事を行い、往時の姿がよみがえったことから一般公開を始めました。
 古今伝授の間に座っていただけば、和歌の真髄が伝えられた宮家の学び舎の閑雅な風情が伝わってきます。そして、目の前には阿蘇の湧水をたたえた水前寺成趣園の悠々とした庭園が広がっています。
 どうぞ、お抹茶と季節の菓子で至福のひと時をゆっくりとお過ごしください。

古今伝授の間

住所:熊本市中央区水前寺公園8―1
電話:096(381)8008
営業時間:9時〜17時
抹茶と和菓子:座敷席650円、椅子席550円
ホームページ
https://www.kobai.jp/kokin/

菓子屋のAnother Work(20) No.207

全国和菓子甲子園 第10回

 令和元年の夏、大阪の辻製菓専門学校で『第10回全国和菓子甲子園』の決勝戦が行われました。この大会は、高校生がペアを組み、和菓子作りの腕とアイデアを競うもので、全国菓子工業組合連合会青年部が主催。今回は全国から81校、246作品の応募があり、地区予選を勝ち抜いた12チームが決勝に進みました。
 開会式の選手代表による宣誓で、会場に気合が満ちます。製作に与えられた時間は1時間45分。今大会のテーマ「令和」はプロにとっても難しいお題ですが、高校生たちは柔らかな発想力で多彩な「令和」を創造していきます。とはいっても、まわりには大勢の審査員やメディア関係者がずらり。緊張で指先が震え、2人の会話もピリピリです。
 実技のあとも、作品に込めた想いやアピールポイントを発表するプレゼンテーション、試食審査と、戦いは続きます。でも、各チームには悩み、話し合い、作りなおし、練習してきた長い時間と、そこに生まれた強い絆があります。それが自信となって、どの顔も誇らしげです。


 今回の優勝作品は、宮城県古川学園高校の佐々木華歩さんと遠山真央さんが作った「令和の円窓」でした。
 高校生の皆さん。2020年もぜひ「全国和菓子甲子園」に挑戦してください。日本中の和菓子屋さんと世界中の和菓子ファンが、その清々しい戦いぶりと新しい菓子の誕生を楽しみにしています。

全国菓子工業組合連合会
青年部 全国和菓子甲子園事務局

E-mail:wakoushien2010s@zenkaren.net
ホームページ
http://www.zenkaren.net/wagashikoushien/