飯島商店のAnother Work No.201

お菓子の香梅のAnother Work

 みすゞ飴でご愛顧をいただいております飯島商店は、江戸時代に穀物商として始まりました。明治中期に、上田の鉄道開通を機に駅前に移転。大正13年(1924)に建て替えた建物を現在も本店として利用しておりますが、この店舗棟が、隣接する事務棟、作業棟とともに平成19年(2007)に登録有形文化財に登録されました。  本店の建物は石造りに見えますが、実は木造の3階建てです。外壁に石目地と呼ぶ表面をざらざらに仕上げる壁塗りを施したもので、木造建築の技術を駆使して洋風建築を実現しようとした大正時代の空気をよく表しています。

 建造当時、養蚕・蚕種の一大拠点だった上田は、製糸業を中核とした国の殖産興業政策により空前の活況を呈していました。好景気に乗じて数多くの洋風木造建築が駅前に軒を連ねる中、このハイカラな建物はひときわ人々の目を引いたようです。

 しかし、生糸関連産業の衰退と昭和中期に進められた商店街の近代化事業により、美しい建物は次々に取り壊されていきました。本店に隣接する倉庫業者の繭蔵もその運命にありましたが、昭和45年(1970)に当社が購入し、事務所、作業所として今も大切に使っています。
 ここにご紹介した3棟は、上田の駅前に唯一残った大正モダニズムを今に伝える貴重な建築遺産・産業遺産です。ぜひ優雅で壮麗な風情の店舗や養蚕で隆盛を極めた時代を象徴する繭蔵をご覧になりに上田にお越しください。

(飯島浩一 飯島商店社長)

みすゞ飴本舗 飯島商店上田本店

住所:長野県上田市中央1-1-21
電話:0268(75)7620
営業時間:10時〜18時
ホームページ
http://misuzuame.com/html/bunkazai.htm

柏屋のAnother Work No.182

柏屋のAnother Work

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夏扇(なつおうぎ)  私ども柏屋の本店、支店には、ちょっと変わったショーウインドーがあります。毎月1篇、子どもの詩が飾られるのです。そして、そのウインドーを『青い窓』と呼び、同名の小冊子を月刊(震災後は隔月)で発行してきました。
 その活動が、本年2013年5月で55周年を迎えました。『青い窓』は545号を数え、これまでに投稿された詩は約30万篇、掲載された詩は1万篇以上にのぼります。
 『青い窓』は昭和33年5月に郡山で誕生しました。盲目の詩人のひろしちゃんこと佐藤浩を中心に、看板屋のけんちゃんこと篠崎賢一、画学生のみっちゃんこと橋本貢、饅頭屋のようちゃんこと四代目本名善兵衛(幼名洋一)という幼なじみの仲間4人が、子どもの夢を育む場を作ろうと、詩を募集し、展示、出版する活動を始めたのです。

夏扇(なつおうぎ) その後『青い窓』からは何冊もの単行本が生まれ、国内外に12もの姉妹紙が誕生しました。また、詩に感動した作曲家の皆様からのお申し出により50を超える詩にメロディがつけられ歌となりました。さらに『青い窓』の詩を世界に紹介する「スカイライトプロジェクト」も昨年から始まっています。
 地道に、しかし着実に『青い窓』は進化しています。ぜひ、ホームページをご覧ください。また、ぜひ一度、開成柏屋内「青い窓ポケットガーデン」に遊びにお越しください。

本名善兵衛(柏屋 五代目当主)

■ 青い窓事務局・青い窓「ポケットガーデン」

(開成柏屋内)/福島県郡山市朝日1-13-5 TEL:024-925-6451

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■ 『青い窓』ホームページ

http://www.aoimado.jp/

■ 電子書籍アプリ『ぼくらのことのは』

女子アナウンサーさん達がボランティアで青い窓の詩を朗読するアプリ。震災をきっかけに創刊。無料。

●iPhone/iPad版 ●Android版
いずれも「ぼくらの ことのは」で検索してみてください。

六花亭のAnother Work No.198

六花亭のAnother Work

六花亭は昭和8年に創業。来年85年を迎えます。
「美味しいお菓子を作ろう 楽しいお買物の店をつくろう みんなの豊かな生活を作ろう、そして成長しよう」。お菓子づくりひと筋に歩んだ創業者・小田豊四郎の基本方針です。そして、故人の思いを引き継ぐため、平成15年9月29日、特定非営利活動法人「小田豊四郎記念基金」を設立しました。北海道の食文化の発展に功績のある団体、個人を顕彰する「小田豊四郎賞」をはじめ、食に関する文献を収集、展示する「六花文庫」の運営、子どもの詩心を育む、児童詩誌『サイロ』の発行を活動の柱としています。
 なかでも、『サイロ』は、当社の文化活動の出発点。ご同業「柏屋」さんが発行する詩集『青い窓』で出会った一編の詩に感動した故人が、十勝帯広の子供たちにも発表の場をと昭和35年1月に創刊し、今年で57年目。7月で690号を数えます。平成23年にはメセナアワード2011で文化庁長官賞を受賞いたしました。十勝管内の小・中学校をはじめ、日本全国のファンに無料でお届けしています。
 また、「小田豊四郎賞」は、これまで14人の生産者が選ばれました。手間を惜しまず、創意工夫を重ね、豊かな食文化に貢献される姿勢は、故人のお菓子作りにも通じています。
 それぞれの活動は小田豊四郎記念基金のホームページでご紹介していますので、ぜひ覗いてみてください。美味しい大地の恵み、素直な子どもの心、おススメの一冊に出逢えるかも知れません。

(樋口勝久 NPO小田豊四郎記念基金理事長)

特定非営利活動法人 小田豊四郎記念基金

住所:北海道帯広市西24条北1丁目3-19
六花亭製菓(株)内
電話:0155−37−6666
ホームページ
http://www.oda-kikin.com

榮太樓總本鋪のAnother Work No.195

赤福のAnother Work 五十鈴蔵

 榮太樓總本鋪は文政元年(1818)、江戸は日本橋で創業し、以来190年余にわたり菓子を商っております。
 その一菓子屋が、明治の初めに茶道宗遍流時習軒を継ぐことになりました。初代が、長女が師事していた時習軒の7世家元が明治維新で大名などの有力なパトロンを失い、困窮しているのを知り、生活費を贈ったところ、意味なく受け取れないとして道具や伝書などを譲るとともに、後を託すと申し出られたのです。これ以降、時習軒は榮太樓總本鋪の当主が家元を務めることとなり、現在は私が11世家元を継承しています。
 榮太樓ミニギャラリーは、日本橋本店内に置いたショーケース一つだけのささやかなギャラリーです。15年ほど前に店を改装した際に、当家に伝わる茶道具や書画、美術工芸品などを公開し、お客様に楽しんでいただこうと設けたもので、毎月、私はこの空間で何を表現しようかと頭をひねっています。四季折々の風情はもちろん、敬老の日、オリンピックといった時事をテーマにすることもあります。
 茶の湯とは趣味の習い事ではなく、「道」であり、茶席という日本の文化が凝縮する空間で、もてなしの心や美しいしぐさ、人としての器量などを研鑽するところだと考えています。ただ、それは堅苦しいものではなく、下品に陥らない気楽さが大事です。
 日本橋にいらしたら、ぜひ足をお運びください。茶の湯の世界が創り出す小宇宙を楽しみながら、一服していただけたら幸いです。

細田 安兵衛(榮太樓總本鋪相談役)

かつて米屋が製造していた羊羹の包み紙。「空港羊羹」や「三越の羊羹」など珍しいものも。 戦前から戦後にかけて成田で製造販売されていた羊羹のパッケージ。成田が羊羹の町であることがよくわかる。

榮太樓ミニギャラリー

住所:東京都中央区日本橋1−2−5
(榮太樓總本鋪 日本橋本店内)
電話:03-3271-7785
時間:9:30〜18:00 日曜・祝日定休
ホームページ
https://www.eitaro.com/
ギャラリーは本店の入口を入ってすぐ右手。

とらやのAnother Work No.193

とらやのAnother Work とらや 東京ミッドタウン店ギャラリー

 とらやは室町時代後期の京都で創業、5世紀にわたり、和菓子屋を営んでまいりました。現在、小倉羊羹『夜の梅』をはじめ、最中や四季折々の菓子を販売しております。
 六本木のランドマーク、東京ミッドタウン内に「とらや 東京ミッドタウン店」がオープンしたのは2007年のこと。和菓子にとどまらず、和の様々な魅力や価値も広くお伝えしたいという想いからギャラリーを併設し、さまざまな企画展を開催しております。想いを同じにする方とパートナーを組み、これまで、ふろしきやこけし、猫などをテーマに実施してまいりました。2014年からは、食まわりを中心に、日本に生まれ育まれた身近な道具を展示・販売する「とらや市」も開催。造形の美しさや力強さ、実用性を兼ね備えた伝統的な品を見つめなおし、現代の生活に用いていただきたいと、籠やざる、箸や匙などをご紹介しております。
 現在開催しているのは、雨をテーマにした企画展「雨を感じる」。日本は世界の国々の中でも降水量が多いと言われ、四季折々に雨の表情も変わります。雨にまつわる名前は400語以上にのぼると言われ、雨が古くから日本人にとって身近な存在だったことがうかがえます。
 本展では、「養花雨」「猫毛 雨」など、さまざまな雨の名前を中心に、雨を表現した文学や絵画、そして菓子をご紹介しております。
 先人たちの感性豊かな世界をぜひお楽しみください。

橋本 恒平(とらや 東京ミッドタウン店ギャラリー担当)

かつて米屋が製造していた羊羹の包み紙。「空港羊羹」や「三越の羊羹」など珍しいものも。 戦前から戦後にかけて成田で製造販売されていた羊羹のパッケージ。成田が羊羹の町であることがよくわかる。

戦争中のパッケージ。 明治時代の米屋の羊羹のパッケージ。 かつて作られていた缶入りの羊羹。デザインやロゴの斬新さに驚かされる。

1階の企画展示室。写真は、昨年開催された第24回企画展「和菓子の掛け紙・包装紙展」。全国銘菓加盟店の協力を得て、すばらしい意匠の掛け紙や包装材が一堂に集まり、大きな反響を呼んだ。 2階の常設展示場。一角に初代・長蔵の部屋を再現したコーナーなども。

とらや 東京ミッドタウン店ギャラリー

東京都港区赤坂9-7-4 D-B117 東京ミッドタウンガレリア地下1階
電話:03-5413-3541
開館時間:11:00〜21:00(店舗営業時間と同じ) 
料金:無料
ホームページ
https://www.toraya-group.co.jp/

第37回企画展「雨を感じる」は6月2日(木)〜10月3日(月)の開催

成田羊羹資料館

なごみの米屋のAnother Work No.191

なごみの米屋のAnother Work「成田羊羹資料館」

 「なごみの米屋」は明治32年(1899)に初代・長蔵が地元産芝栗の甘煮を練りこんだ栗羊羹を成田山新勝寺の参道で製造販売したのが始まりです。大正の初年頃から、成田詣での土産は「米屋の栗やうかん」が定番になりました。30軒近い羊羹屋が軒をつらねていた時期もありました。成田が「羊羹の町」であることを、訪れるお客様にお伝えしたい…、そんな思いで成田山表参道・なごみの米屋總本店の裏手に『成田羊羹資料館』はお目見えしました。
 2階の常設展示場には、かつて参道で販売されていた10数店の60余点もの羊羹のパッケージ・コレクションがあります。多様な意匠に当時の賑わいが伝わってきます。当店が開発した密封銀紙流し込み羊羹や戦時中の巻き取り式缶詰羊羹、戦後の缶入り水ようかんなど時代の先駆け商品も紹介しています。慰問品の羊羹のおいしさを綴った戦地からのお便りの展示は、この町のもう一つの歴史を伝えています。
 1階には半年替わりの企画展示があります。「米屋百年の歩み」「羊羹の話」「お菓子の昭和史」「成田の風景 いま・むかし」「和菓子の掛紙・包装紙」などテーマは多彩です。現在開催中の「成田をめざす鉄道の歴史」展には、多くの鉄道ファンが訪れています。 羊羹資料館の近くには、室町時代の永禄の昔、ご本尊不動尊明王像を当家で仕守りしておりましたご縁の「お不動様旧跡庭園」があります。どうぞごゆっくり門前町成田の散策をお楽しみください。

諸岡 靖彦(なごみの米屋 店主)

かつて米屋が製造していた羊羹の包み紙。「空港羊羹」や「三越の羊羹」など珍しいものも。 戦前から戦後にかけて成田で製造販売されていた羊羹のパッケージ。成田が羊羹の町であることがよくわかる。

戦争中のパッケージ。 明治時代の米屋の羊羹のパッケージ。 かつて作られていた缶入りの羊羹。デザインやロゴの斬新さに驚かされる。

1階の企画展示室。写真は、昨年開催された第24回企画展「和菓子の掛け紙・包装紙展」。全国銘菓加盟店の協力を得て、すばらしい意匠の掛け紙や包装材が一堂に集まり、大きな反響を呼んだ。 2階の常設展示場。一角に初代・長蔵の部屋を再現したコーナーなども。

成田羊羹資料館

千葉県成田市上町500
電話:0476(22)2266
開館時間:10時〜16時
休館日:展示替え時は休館
料金:無料
ホームページ
http://www.nagomi-yoneya.co.jp/06_youkanshiryoukan/

「なごみの米屋」の總本店の裏手に建てられている成田羊羹資料館。玄関先にある赤い郵便ポストは今も現役。

成田羊羹資料館

菓子屋の広報 No.216

菓子屋の広報

 全国銘菓の加盟店の中には、和菓子の歴史や文化を紹介する書籍や広報誌を出したり、地域と結びついて詩集や絵本などを出版する店が数多くあります。また近年は、店のホームページで菓子がつなげる様々なモノ・コト・ヒトを紹介するサイトが増えています。
 現在、入手可能な書籍・冊子、及びホームページサイトをご紹介しましょう。

■ とらや

株式会社 虎屋の菓子資料室「虎屋文庫」が、1994年から年1回、毎春に研究論文を中心とした機関誌『和菓子』を発行している。900円または1000円(税込・送料別)。また、書籍として『和菓子を愛した人たち』、『ようかん』などがある。ホームページにも和菓子にまつわるコラムなどを掲載。『和菓子』の入手は電話、FAX、ホームページの問合せフォームから。
☎ 03(3408)2402/FAX 03(3408)4561/ https://www.toraya-group.co.jp/

『ようかん』
虎屋文庫著、新潮社、
2019年発行、
2420円(税込)

『和菓子を 愛した人たち』
虎屋文庫編著、
山川出版社、
2017年発行、
1980円(税込)

『和菓子』
最新号は29号

■ 村岡総本舗

本店に隣接する羊羹資料館の創立30周年を記念し、2014年に『村岡総本舗羊羹資料館案内』を発刊、羊羹にまつわる109話を収録している。主著者は、九州の菓子文化に精通する当主の村岡安廣氏。入手は電話またはFAXで。1320円(税込)。
☎ 0952(37)3173/
FAX 0952(72)2132
http://www.m-youkansiryoukan.jp/book_form.htm

■ 両口屋是清

2008年〜2019年に、和菓子や日本の文化を紹介する広報誌「いとをかし」を発刊。現在は休刊中だが、14号〜32号のバックナンバーを無償頒布している。入手は「季刊誌請求フォーム」またはフリーダイヤルで。無料。
☎ 0120‐052062
https://ryoguchiya-korekiyo.co.jp/magazines/

『村岡総本舗
羊羹資料館案内』

広報誌
『いとをかし』

■ 六花亭

昭和35年(1960)、『青い窓』(柏屋発行)に感銘を受けた創業者が「十勝の子どもたちにもこんな詩誌があったら…」と地元教師に呼び掛け、児童詩誌『サイロ』を創刊。以来、半世紀を超え十勝管内の小中学生の詩を紹介。ホームページでも一部閲覧可。入手は「サイロの会」事務局へ。
☎ 0155(24)6655/FAX 0155(24)6656/
Mail:sairo@rokkatei.co.jp/
http://www.oda-kikin.com/sairo.html

■ 柏屋

昭和33年(1958)年5月に創刊した児童詩誌『こどもの夢の青い窓』が、64年目となる今年7月に600号を数えた。毎号、福島県を中心に全国から投稿された子どもたちの詩が紹介されている。入手は「こどもの夢の青い窓」オフィシャルサイトへ。年会費2000円で年6回、奇数月に届く。
https://www.aoimado.jp/

『サイロ』
751号
(2022年7月1日発行)

『こどもの夢の青い窓』
600号
(2022年7月10日発行)

■ 赤福

折箱入りの赤福餅に、日替わりのしおり『伊勢だより』が入っている。徳力富吉郎氏による版画で伊勢神宮の祭や四季折々の花、風景などが描かれ、裏面は内容にちなんだ店主からの手紙となっている。ホームページにも当日版を掲載。
https://www.akafuku.co.jp/ise/tayori/

『伊勢だより』。
商品の折箱に封入されている

■ 五勝手屋本舗

創業150周年を記念し、2022年に地元に語り伝えられてきた民話を絵本にした『7394』を発刊。江差に繫栄をもたらしたニシン漁にまつわる伝説がダイナミックに展開する文章とイラストで描かれている。入手は電話またはオンラインストアへ。1650円(税込・送料別)。
☎ 0139(52)0022/ https://gokatteya.co.jp/

絵本
『7394』

各店のホームページで楽しめます

 廣榮堂「桃太郎伝説」
https://koeido.co.jp/story/momotaro/
鬼退治で知られる「桃太郎」の昔話の由縁ともされる、岡山の2つの古社に残る伝説を紹介。歴史好きも必見。

 鶴屋𠮷信「京菓子寸話」
https://www.tsuruyayoshinobu.jp/yokimono/story
丹波大納言小豆、道明寺、柚子、寒天、栗、吉野葛、笹など、京菓子に欠かせない材料を由来や製法をまじえて紹介。

カステラ本家福砂屋「カステラ文化館」
https://www.castella.co.jp/
カステラの原型となった16世紀のスペイン・ポルトガルに生まれた菓子の話をはじめ、カステラの歴史と文化を紹介。

 石村萬盛堂「萬盛堂歳時記」
https://www.ishimura.co.jp/saijiki/
博多にまつわる様々な話を紹介。「黒田武士」「山笠のはじまり」「正月準備」など多彩な切り口で、町の魅力を伝える。

 本家尾張屋「日々のこと」
https://honke-owariya.co.jp/stories/
京都のコーヒー店や製粉屋さん、お茶の老舗、料理人など、店と「繋がり」がある人々のストーリー。

 かるかん元祖 明石屋「軽羹百話」
https://www.akashiya.co.jp/stories/
鹿児島名産の菓子「かるかん」について、歴史や文化、材料などに関する話を読みやすく解説。

菓子屋のSDGs No.215

菓子屋のSDGs

SDGs(持続可能な開発目標)とは

 SDGs(Sustainable Development Goals)は、2030年までに様々な問題を世界中が協力して解決していこうと国連が決めた17の目標です。日本でも大きな広がりを見せていますが、全国銘菓の加盟店も多彩な取り組みを行っています。
 例えば、自然界で分解されないため生態系に影響を及ぼすなどの問題を起こしているプラスティックは菓子の容器や包装でも使われています。これを紙やバイオプラスティックに切り替える試みが始まっています。

【環境にやさしい包装資材に】

「チョコレート5枚入」(※写真)や「ホワイトチョコレート5枚入」の外箱を紙素材に変更。ビニール袋や通販品用緩衝材をバイオマス資材に替えた。<六花亭>

箱入り・缶入り「鳩サブレー」の仕切りトレーを、サトウキビのしぼりカスを原料とした紙素材のものに変更。袋入り「鳩サブレー」の袋も紙素材に変更した。<豊島屋>

新商品「むかし吉備団子と日本茶セット」のパッケージにはFSC認証の紙、印刷にはバイオマスインクを使用。<廣榮堂>

ビニール袋をバイオマス25%以上のものに変更し、無償提供。
<わかさいも本舗>

手提げ袋をプラスティック素材から紙素材に変更。デザインや強度は変わっていない。
<とらや>

 豊かで幸せな未来を次世代に渡していくために、プラスティックや食品ロスの削減だけでなく、皆でそれぞれができる努力や工夫をしていきましょう。

【フードロスを減らす】

棹菓子の切り落としを冷凍し、数か月に一度、販売。切り落としの廃棄はほぼゼロに。
<乃し梅本舗 佐藤屋>

「一六タルト」の包装素材を変更して賞味期限を1〜2週間伸ばすことで、食品ロスを削減。
<一六本舗>

カステラの切れ端を2度焼きしたお菓子「フクサヤビスコチョ」を開発。一部店舗で販売。<カステラ本家福砂屋>

【省エネのアイデア&リサイクル】

強い陽射しを避けるために年6回、作り替えている日よけ幕を、エコバッグに。今年で12年目になる取り組み。<かるかん元祖 明石屋>

【国産材を使う】

新店舗の什器に県内産「西川材」の間伐材を使用。使いながら乾燥させ、半年後に交換。返した木材は建材などになる。<龜屋>

砂糖文化を広めた長崎街道「シュガーロード」 No.212

シュガーロード
南蛮人来朝図
  南蛮人来朝之図
(長崎歴史文化博物館所蔵)
 

 昨年夏、「砂糖文化を広めた長崎街道〜シュガーロード〜」が、日本遺産に認定されました。日本遺産は、文化庁が日本各地の有形・無形の文化財群を語るストーリーを認定し、それを発信することで地域を活性化しようという事業です「。シュガーロード」も、長崎街道の歴史や風景とともに、400年以上もの時をかけて発展してきた砂糖や菓子の文化に触れられるというストーリーが提示されました。

 日本における砂糖の記述は、奈良時代から見られますが、大量の砂糖が輸入され、一般の人の口にも入るようになったのは江戸時代のこと。宝暦年(1759)には今の金額で億円相当の砂糖が輸入されたと記録されています。
 鎖国のため唯一の貿易窓口であった長崎の出島に荷揚げされた砂糖は、多くが海路で大坂へ、そこからさらに京、江戸へと運ばれました。
 一方、陸路も、海外からもたらされた多彩な物産を運ぶため、長崎と豊前国小倉(現在の北九州市小倉北区)を結ぶ長崎街道が整備されました。街道沿いの佐賀藩と福岡藩には、長崎港の警固にあたる代わりに輸入品を買い入れる特権が与えられたため、砂糖が入手しやすく、また菓子の製法なども伝わり、独特の食文化が花開いていきました。これが、長崎街道が別名「シュガーロード」と呼ばれる所以です。
 長崎の「カステラ」や佐賀の「丸ぼうろ」、福岡の「鶏卵素麺」などがスペインやポルトガルにルーツをもつ南蛮菓子であることは、ご存じのとおり。さらに、諫早の「おこし」や小城の「羊羹」、北九州の「栗饅頭」なども、豊富に手に入る砂糖があってこそ生まれた菓子です。
 なお、日本遺産を構成する文化財群の中には、長崎街道の面影が残る町並みや長崎の唐寺・興福寺などの史跡に加え、村岡総本舗の本店および砂糖貯蔵庫や製造道具を展覧する羊羹資料館、丸芳露本舗北島の菓子製法文書も挙げられています。
 北部九州に点在する個性あふれる菓子を街道という線で結び、さらに歴史や文化へと関心を広げていくと、銘菓を巡る旅はいよいよ楽しくなりそうです。

白玉屋榮壽のAnother Work No.211

白玉屋榮壽

 白玉屋榮壽は弘化元年(1844)に奈良・三輪山の山裾に創業、およそ180年にわたり和菓子屋を営んで参りました。三輪山は山そのものがご神体で、中腹に日本最古の神社・大神(おおみわ)神社が鎮座します。当店は、そのお社の大鳥居の脇で、ただ一つの商品、「名物みむろ」を作り続けてきました。
 名物みむろは、漉し餡に少量の粒餡を合わせた「鹿の子餡」をはさんだ最中で、奈良の名産である大和大納言小豆を使い、昔ながらの製法で作っております。この小豆は、皮が薄く、しかも弾力があって割れにくく、風味が豊かなのです。ところが、平成に入った頃から作付けが減り続けて、漉し餡の小豆は北海道産が中心に。さらに近年は、粒餡に使う小豆も奈良県産の確保が難しくなってきました。
 そこで2018年の11月1日、小豆の収穫期に合わせて、全国紙4紙の奈良県版に広告を出しました。
「小豆買います。貴方がお作りになられた小豆をお譲りいただけませんか」
 その日からしばらくは、電話が鳴りやみませんでした。「JAの規格外の小豆でもいいですか」「少量でも買うてくれますか」。もちろんです、と答えると、農家さんが次々に小豆を持って来店されました。そして、「来年はもっとようけ作るわ」と笑顔で帰られるのです。さらには、「自分の育てた小豆が『名物みむろ』になるのが誇らしい」といったお声もたくさんいただきました。
 この反響を受けて、翌年は作付け期の6月1日に再び広告を出しました。今度の文面は「小豆をお作りいただけませんか。種小豆は提供させていただきます」としました。以来、毎年6月と11月の広告を続け、約30軒の農家さんとお付き合いをしています。
 昨年は広告をきっかけに小豆栽培を始め、納品された、デイサービス施設に通う高齢者の方々から、「達成感を感じた。社会参加できて嬉しい」という感想が届いて感激しました。また、なんと当社の社員が自発的にローテーションを組んで小豆を作り始めました。
 原料調達のための小さな広告は、多くの余得も運んでくれているようです。

石河敏正(白玉屋榮壽社長)

白玉屋榮壽

住所:奈良県桜井市三輪 497
営業:8時〜19時 (月曜・第3 火曜休) 
TEL:0744 (43) 3668
ホームページ
https://www.begin.or.jp/~mimuro/
白玉屋榮壽